年を祝う
- 1、「とし」と「いのち」
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普段の生活ではあまり意識することのない「年」ですが、お正月にお年玉をもらったり、節分には年の数だけ豆を食べたり、一定の年齢に達すると神社にお参りに行き家族そろってお祝いをする…、そんな習慣が今日に伝えられていることを考えると、日本人がずいぶんと「年」にこだわって生きてきたことがわかります。
単なる時間の積み重ねではない「年」に抱き続けて生きてきた、そんな日本人の「年」に対する思い入れを、こんな時代だからこそ考えてみたいと思います。
- 2、年に込められた願い
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私たちの祖先は、お正月を迎えることで年を一つずつとるという考え方を、「数え年」として生活の中に取り入れてきました。今日でも年配の方に年齢を尋ねると、数えで何歳という答え方をしばしば耳にします。
これは、稲作を中心とした生活習慣から生まれてきました。私たちの祖先は、春に蒔いたもみが苗となり、初夏の田植えを経て、秋には黄金色の稲穂を実らせるという流れを生活の基本的なリズムや精神の規範におき、やがて「年」と呼ぶようになりました。
その中でもお正月は、稲に宿る新しい力を自分たちの中に分けていただく期間として、特に大切にしてきました。
- 3、お年玉
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「初詣」、「お雑煮」、「お年玉」など、一年の始まりのお正月には日本人が古来大切にしてきた「年」の観念を見ることができます。
例えば、お年玉に注目してみると、今日ではお金を包むことが多くなりましたが、もともとは丸いお餅を大人も子供もいただくものでした。このお餅をいただくことでお正月にお迎えする年神様の魂を分けてもらい、年を一つ取ることができると考えたのです。
- 4、人生の節目と日本人
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日本人は、人生の節目節目にそれまで積み重ねてきた年を振り返り、生命の尊さを考えてきました。
私たちは毎日、家族をはじめ多くの人たちや、自分の周りの様々な見えない力に支えられて生きています。日本人は、この生命を支えてくれる見えない力の働きを「神様のおかげ」と呼び、神様に感謝する心を培ってきました。
それは一日の神棚への祈りからはじまり、お正月の初詣、それぞれの年の節目のお祝いへとつながっています。「数え年」は、この節目節目のお祝いを地域の人々、周りの人々に誰もが同じ時に同じように祝っていただけるのです。
七五三や成人式などのお祝いも、様々な支えによって生かされて今日に至っている自分の存在と、生命のつながりを確認する機会ともなります。