冠婚葬祭
神葬祭や祖霊祭に参列する際の服装と、お供えする玉串料の包みの水引について教えてください。
神式の葬儀には、通夜祭や告別式(葬場祭)、一年祭までの霊前祭や一年祭後におこなわれる祖霊祭(仏式の法要に当たる)など一連の儀式がありますが、こうした儀式に参列する場合、服装や水引の色などマナー上いくつか戸惑うことがあるかと思います。
服装については友人や知人の通夜に弔問するとき、喪服を着用しないのが本来のマナーであるようです。急いで弔問に訪れたという気持ちを表すためにも、地味な外出着(スーツなど)で差し支え有りません。但し、告別式に参列できず、通夜だけの弔問になる場合もありますのでその場合、現在では喪服(男性・略礼服,色無地の羽織袴/女性・黒のワンピース、スーツ黒無地の和装)を着用することもあります。
告別式の霊前祭・祖霊祭については、一般的には一年祭が一つの節目と考えられます。たとえば『神葬祭の栞』(神社本庁編)においても、一年祭までを「神葬祭」とし、それ以降の儀式を「祖霊祭」と記すなど明確な区分けがされています。その式次第の中には「一年祭(地域によっては五十日祭・百日祭の場合もある)の後、霊璽を祖霊舎に遷し、祖先の御霊と共にお祀りする」とあります。死を弔う儀式から、家の守り神として鎮祭する儀式としての意味合いが強くなるわけですので、服装も一年祭の後からは、ダークスーツなど、華美ではない服装に、女性も此に相当する服装になります。
また、五年十年と年数を経るにつれて徐々に平服(一般のスーツなど)にしていって構いません次に水引についてですが、弔事の場合は真結びで結びきりにします。水引の色は黒と白(または黒と銀など)のものを用いますが服装と同様に一年祭以後(地域により五十日祭・百日祭、または祖霊舎へ合祀の後)より慶事に用いる紅白の水引を用いても良いとする考え方もあります。此は神祭りと同様であるとの意味からですが、普通は一年祭以降の祖霊祭でも黒白の水引を用いることが多い用です。
神式の場合水引ではなく神事で用いる麻を使用しますが、この場合慶弔どちらにでも用いる事ができますので、迷ったときなどには便利かと思います。
※包みの作り方は、氏子の栞「参拝と作法」(神社本庁刊)をご参照下さい
- 神社新報 『神道いろは』より転載
- 平成十三年二月二十六日
- 第二五九〇号
冠婚葬祭をおこなう際に気をつける大安や仏滅などの日の吉凶について教えて下さい。
よく冠婚葬祭をおこなう日の吉凶を問いますが、その中でも一般的に用いられるのが、先勝(せんしょう)・友引(ともびき)・先負(せんぷ)・仏滅(ぶつめつ)・大安(たいあん)・赤口(しゃっこう)という六つの日の吉凶を現した六曜(ろくよう)です。古代から明治以前まで、日本では中国の暦の影響を受け、干支や節気を重要な要素として備えた太陰太陽暦を使用してきましたが、この六曜も時刻の吉凶を現すものとして、室町時代初頭に中国より伝わって参りました。
我が国に伝わった当初は、小六壬(しょうろくじん)といわれ、大安・留連(りゅうれん)・速喜(そっき)・赤口・小吉・空亡(くうぼう)の六つから成る時刻点でしたが、その後時代とともに、順序や名称が変遷し、江戸時代末に、現在のような形に固定しました。勝負に関わる六曜の名称からも想像がつきますが、当時は遊郭や博徒の間でひそかに用いられていたようです。
明治以降、神宮の暦だけが官暦としての発行を許されましたが、この暦は日の吉凶などの暦註が一切省かれたものでした。これに対して民間で出回った偽暦(おばけ暦)には暦註が掲載され、六曜が一般庶民の間に広く普及するようになりました。
戦後、暦の発行が自由になったため、六曜や人の生年により吉凶を判断する九星などを載せた運勢暦が社寺や出版社から盛んに出されるようになりました。こうした暦の多くは、神々の加護を戴くために、常に慎みのある生活を送ることを説いており、社会全般的な習俗として我々の生活に潤いを与えてきました。
六曜の吉凶占いで広く言われていることは、友引に凶事をおこなわない、仏滅は万事を忌むなどの禁忌があります。あまり拘泥しすぎるのは問題ですが、一つの伝統文化として考えればよいのではないでしょうか。
- 神社新報 『神道いろは』より転載
- 平成十二年一月十日
- 第二五三七号
御神前に金品をお供えするときに記す表書きの書き方などについて教えて下さい。
御神前に金銭や食物、お酒などをお供えする際に記す表書きには幾つかの書き方があり、「御神前」「御供」「玉串料」「御榊料」「初穂料」等の書き方が一般的です。「御神前」「御供」という表書きは説明するまでもありませんが、「玉串料」「御榊料」とは玉串や榊の代わりに、また「初穂料」とはその年に初めて収穫されたお米の代わりに、それぞれお供えする料であることを意味しています。
この他「上」や「奉献」「奉納」と 書かれる場合もあります。「上」は神様や目上の方に対する御礼の際の表書きに用いられる語です。 「上」はよく神符守札などの授与品や撤下神饌を入れる袋の表書きにも用いられていますが、この場合、撤下品は神前にお供えする際「上」と記すのであって、「上」とはあくまでもお供えをする神様に対して用いられている語と言うことができます。一方、神符守札は御神霊のご加護を戴く尊貴なものなので、丁重さを表現するため「上」を表書きにしていると考えることもできます。
このほか、神式の葬儀のお供えに関しては「御霊前」や「玉串料」「御榊料」といった表書きが用いられます。市販の不祝儀袋には「御霊前」とあっても、蓮の花の文様が付いている場合がありますが、これは仏式用のものなので注意して下さい。
表書きには、神事に用いられる以外にも冠婚葬祭を通じてさまざまな書き方があり、自らの気持ちを伝える意味でも大切なものと言うことができます。
- 神社新報 『神道いろは』より転載
- 平成十二年三月二十七日
- 第二五四七号