縁結び

 一口に縁結びといっても“恋する男女”の縁結びだけではなく“人と人”“肉体と魂(生命力)”“人と神仏”“霊魂と肉体”“母親と胎児”など私たちは様々な物と縁を結んで生活しています。

 それらの縁はどのようにして結ばれるのでしょう。縁とは、自ら積極的に縁を結ぼうとしなければ結ばれないものです。人と人とが会ったとき、ただそれだけでは縁は結ばれません。その時に“言葉”を交わすことで良縁を結ぶことが有ります。また、“経済的な援助”や“地域社会に肉体的・精神的な奉仕”“神仏を崇敬・感謝”するなどちょっとした行動を起こすことが必要です。

 その他に私たちが日常的に使用している道具の中で、普段使用する機能の他に、非日常的な機能をもった道具が有ります。つまりそれらの道具により呪力“異界に通じる機能”をもって超人的パワーを獲得することができるのです。

  そんな道具約130種類を、呪物としての機能別(依り代、神霊降臨・霊力招来、神懸かり、破邪、未来予知、呪詛、財福招来、浄化、付喪神、変身・化身、縁結び、採物、祭祀具)に神秘的なエピソードを交えて紹介している本が有りました。戸部民夫著 新紀元社刊『神秘の道具』日本編です。

  その中で特に 西野神社の御祭神の御神徳としてあげられる安産・縁結びに特に呪力を発揮する道具を抜粋転載いたしました。どうでしょう皆様方の縁結びのお役に立つでしょうか。

九星による相性 / 縁結びのお守り

◆帯

[不安定な胎児の霊魂を母胎に結ぶ]

 帯の中心的な呪力は、霊魂を肉体に結び止める機能である。言葉を変えれば、異界からやってくる霊的なモノをこの世につなぎ留める役割を果たすアイテムといえる。

 帯は、和風の衣生活に欠かせない装具として日本人の生活に密着してきただけに帯の呪力は、伝統的な人生儀礼の中で盛んに利用され、人の誕生から臨終まで関わっている。なかでも広く行われているのが「帯祝い」だ。これは妊婦が妊娠5ヵ月目の戌の日に岩田帯(腹帯)を締める祝いのことである。戌の日にするのは、犬が多産でお産が軽いことにあやかったもの。実際的には、流産や早産の防止の役目を果たし、不安定な胎児を母体につないでおくという意味で帯の効果が求められたのだ。それと同時に帯祝いは、異界からやってきた胎児の魂が母親の体内に定着し、この世の存在として社会的に認知される最初の儀式という点でも重要な意味も持っているのである。

  岩田帯は、古くは斎肌帯といわれ、斎は「忌」を意昧し、この帯を締めた日から身を慎み産の忌みの期間に入るものとされていた。岩田帯に使わはれる布は、社寺で安産の祈祷をしてもらったものや祝儀の際に使われた布など、何らかの形で霊的に浄化されたものを用いるのが習憤である。そのほか色や長さ、巻き方の強さ、犬の字を書く、帯の間に熊の毛や蛇の抜け殻を入れるなど、地域によって縁起がよいとされるまじないの方法がいろいろとある。

[子供の成長を守護する力]

  子供が無事生まれると、こんどは肉体に入った魂を飛び出さないように結び留めるのが帯の役割となり、子供の成長段階の節目節目でその呪力が発揮されることになる。出産直後から子供の肉体と魂を安定させるためにさまざまな儀礼が行われるが、なかでも重視されているのがいわゆる七五三の儀礼である.3歳の男女児の「帯結び」や「帯はじめ」と呼ばれる儀礼は、不慮の事故や病気などで魂が外に飛び出さないようにするという意味。また、7歳になった女の子の「帯解きの祝い」は子供の時期を終了して以後は大人の帯を締めるという儀式である。一般に子供は“7歳まで神の子”という観念があり、「帯解き」には立派な大人の女性に成長し杜会の仲間入りできるようにとの願いが込められてる。

 そのほか臨終に関しては、帯が死者の魂との決別の儀式に用いられたりする。桂井和雄著「俗信の民俗』によれば・高知県の葬送習俗に、死者を納棺するときに生前に使っていた帯を巻いて枕にするという風習が広く行われているという。この地方では、ふだん帯を枕にすると悪い夢を見るとか、長い夢を見るからやってはいけないという俗信があり、死者にはあえてその逆を行うわけである。このように忌み嫌われることやふだんと異なる帯の結び方などを死者に対して行う真意は、死者の生前の神仏に対する祈願を解消するいわゆる「願ほどき」と共通するものと考えられている。

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◆石

[成長し子を産む生命力]

  子授け、安産、縁結びなどの祈願の対象となる石は、成長したり子を産んだりするという意味で、生物と無生物の境に位置する存在である。昔から日本人は、どちらかといえば石を生き物であると信じてきた。生きているから石の中の霊魂は、時とともに成長もするし、子を産むのである。子を産む石に関しては、子持ち石や子生み石などの伝承がある。また、石が成長する例は各地の生石伝説に伝えられていて、神社や霊山に参拝してそこで拾った霊石だとか、河原や海底で拾った小石を持ち帰って神体として祀ると、その石がだんだん成長して大石となるといったものである。

  生命力と関係する石の呪力は、性神信仰と結びついて豊穣や子孫繁栄をもたらす力としても利用されている。陰陽石(男根や女陰に似た白然石またはそれをかたどって彫像した石)などはその代表的なもので、生命を生み出す根源的パワーを象徴する。産石、生石、子生石、光石などもそういうパワーをもつとされる石である。

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◆糸

[運命をつなぐ赤い糸]

  俗に「赤い糸で結ばれる運命」などというように、糸の呪力には目に見えない霊的なモノを「結ぶ」機能がある。その力は、昔から災厄や病気を除け、好きな人と出会いたいといった願いをかなえるまじないの手段として用いられてきた。恋する男女の魂を結びつける力は、糸の結び目に蓄えられ「結ぶ」「合わせる」「つなぐ」といったエネルギーによる「縁結び」の呪力である。こうした糸の呪力を利用したお守りの1つに熊野那智大社の護符がある。これは紅白の糸を結んで、相手の衣服や持ち物などにひそかに入れて願いをかけると成就するとされている。

 もう少し本格的な呪術としては、密教系呪法の「六字経法(六字法)」に、白い糸を使う結線の法がある。白糸2本をより合わせて三尺五寸(106センチ)の長さにし、修法で真言を1回唱えるたびに1つ結び(一咒一結)、108結(1筋という)を作る。それを7日間続けて21筋を作ると結願で、これによって願いが成就するとされている。

[魂が抜け出るのを防ぐ]

  人間の肉体と魂(生命力)を結びつけることも、糸の呪力の中心的な機能の1つである。まじないの一種に、新生児がくしゃみをしたときに行う「鼻結びの糸」がある。生まれて七日目(お七夜)くらいまでの間、赤ん坊がくしゃみをするたぴにその数だけ糸に結び目を作るというもの。昔からくしゃみは、縁起が悪いものと考えられてきた。その理由は、魂が飛び出し悪霊が入りやすくなるからである。そこで糸の「結び」の呪力で魂が抜け出るのを防ごうとしたわけである。

  このように糸で魂を結ぶ呪術を「魂(玉)結び」ともいう。糸の結び目には生命力のエネルギーを蓄える機能がある。それを利用した延命長寿を願う呪術の方法が、宮中で毎年の新嘗祭の前日に行われる鎮魂祭である。これは「タマシズメの祭」「タマフリの祀り」などと呼ばれ、霊魂が体から離れて病気になって死んだりしないように鎮める祭儀である。その一連の行事のなかで、とくに魂が抜け出るのを防ぐ呪術として行われるのが魂緒の糸(木綿)」で、その際、神祇官が赤、青、黒、自の糸を決められた順番で結ぶ行為を10回づつ繰り返し、「結び」の呪力を発揮させる。

 そのほかには、平安時代から江戸時代まで行われていた仏教習俗に、「阿弥陀の手糸」と呼ばれる五色の糸がある。これは仏教信者が臨終のときに阿弥陀仏像の手から自分の手に五色(青、黄、赤、白、黒)の糸を渡し、来迎引接(仏によって極楽浄土に導かれる)を願うというもの。五色の糸は、阿弥陀仏の霊力を発揮するアイテムということになる。

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◆絵馬

[神仏に願いを伝える通信手段]

  絵馬は呪物の一種であり、その機能は神仏の注意を引いてその霊力を発揮してもらうということにある。つまり、絵馬というのは、神仏に願いを伝えるための通信手段なのである。

  霊的な通信手段とされる道具は数多くあるが、なかでも絵馬の最大の特徴は、今日でも大いに利用されているように、簡易性と便利性、安上がりで庶民的という点だ。ふつう本格的に寺社で祈願すれば、祈祷や修法による儀礼的な手続きが必要となる。その点、絵馬を用いればその手間を一切省略できる。個人が勝手に祈願奉納すればあとは神社や寺院でまとめて祈祷をしてくれるのだからこんな楽な方法はない。また、悩みを託す神さまにしても、個人の都合で白由に選ぶこともでき、しかも発揮してもらい霊力(信仰やご利益の内容)も祈願する側から勝手に要求できる。そういう非常に都合のよいものだから、絵馬は庶民に大いに利用されるようになったわけである。

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◆扇

[神霊を乗せる扇御輿]

 ―前略―軍扇の呪力の背景には、扇を神の乗り物とする考え方がある。

  扇を神の依り代とする信仰は古くからあり、神体として神杜の祭礼に用いられることが多い。“那智の火祭り”として知られる熊野那智大社の扇祭(7月14日)では、祭りの主役を果たす扇御輿が登場する。38面の扇が8面の鏡とともに飾られた豪華な扇御輿は、神の依り代にほかならない。

 同様なものに山形県春日神社の黒川王祇祭の扇様(王祇様)や、伊勢神宮の伊雑宮の御田植神事に立てる扇(大翳とも呼ばれる)などがある。

 ほかにも神の乗り物である扇の呪力は、民俗行事のなかで新生児の初宮参り、結婚の見合いや結納、年祝いや厄除けなどの人生儀礼に利用されている。

 また、扇は神祭りにたずさわる者の持つ採物としても重要である。採物というのは、儀式や祭りの場に神を降臨させる呪物であり、神が降り立つ依り代として機能する。たとえば奈良・春日大社の巫女神楽の檜扇など神事に用いられる扇、さらに舞踊や芸能の重要な小道具の扇も、採物としての機能をもっている。

熊野那智大社
伊勢神宮の伊雑宮の御田植神事

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◆こより

[魂を結び、汚れを解き放つ ]

  こよりは、水引き(「水引き」の項参照)として用いられるとき、色の染め分けや結び方などによって、吉凶の別が生じる。こうしたこよりの呪力の基本にあるのは、糸、紐、綱、縄などに共通する霊的な力であるモノを「結ぶ」機能であるが、実際に用いられるときには、こよりなりの個性が発揮される。

  魂が肉体から抜け出してしまわないようにする「結び」の呪法に「魂結び」がある。これは長寿を祈願する鎮魂祭の儀礼に用いられるもので、それとは逆に肉体に入り込んだ悪霊を追い出し、心身を浄化する祓ひの儀式の一種に「解縄祓」という呪法がある。此には祓串、人形、米そして解縄と呼ばれる小指より少し細いくらいの太さのこよりが用いられる。解縄を口に加えて、こよりの縒りを戻す行為によって、汚れが解き放たれるとされている。

[縁結び祈願の具]

  「結び」といえば、縁結びの占いが今日でも盛んに行われているように、男女関係を占う儀礼は古代からさまざまな形で行われてきた。江戸時代には、心を寄せる相手の名を書いたこよりを、神社の格子や神木に薬指か小指を使って結びつけ、結婚を祈願するということが行われた。

 また、そうした占いの儀礼を女性の遊びにした「縁結び」「宿世結び」と呼ばれるものも流行した。これは男女になぞらえたこよりを作り、それを適当に結び合わせて、その組み合わせを楽しむというものである。こうした遊びごころにも、こよりに秘められた「結び」の呪力に対する信仰がひそんでいると考えられる。

紙縒(こより)

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◆杯

[神と人を結ぶ酒宴の呪具]

  盃の呪力は、神祭りのハレの飲み物である酒を飲むための専用の食器として機能することから発生したものである。そもそも酒は神祭りのために醸造され、神前においてみんなでくみかわすための神聖な飲み物である。そして、神前で神とともに酒を飲む儀式が、酒盛のルーツであり、そこでの主役は酒と盃である。酒盛のモルという言葉には、神との関係と同時に、同じ飲食物をみんなで分かち合う(共同飲食)ことによって、目にみえぬ結びつきを築く、または確認するという意味がある。

 神事の酒盛りには厳格な作法あった。酒を注いだ杯が上座から下座へと順々に流れて行き、一回りすることを「初献」という。本式にはこれが5献まで行はれる。ちなみにこのときに1献ごとに見立てられる酒の肴のメニューのことを「献立」という。このように1つの盃に酒を注ぎみんなで飲みまわすことによって、神と人とが結びつき結合が強化されると考えられた。それだけに非常に神聖な道具だったのである。

[人と人を結ぶ盃事]

 神と人とを結ぶ盃の呪力は、一般に人と人の魂を結びつけたり、逆に断絶させる機能として発揮される。此は盃が、異界のモノ=神に通じる能力を備えているから発生する力といえる。日本には昔から、酒をくみ交わし盃を嘗め合って人間関係をスムーズにしたり、連帯感を強めるといった習慣がある。そのべ一スにあるのが魂の結合や約束事を誓い合う盃事の儀式である。

 代表的な盃事としては、結婚式における三三九度がある。今は二人の誓いの儀式として行われるだけだが、以前は婚姻における重要な儀式として、結納から結婚後の挨拶まわりまで、家同士や地域社会の結びつきに関するさまざまな場面で盃事が行われたものである。そのほか、仮の親子関係を結ぶときにも行われるし、共同体の祭祀集団への加入など特定の集団への構成員として規則に従い、連帯の意志を表すときにも行われる。また、やくざの親分子分、兄弟分などのいわゆる固めの盃なども盃事の一種である。

 逆に関係を絶つ意昧でも盃事が行われる。'葬式の出棺のとき永遠の別離のために酒を飲む(ワカレノオミキ)とか、盃を割ったりするのも魂の決別のいみである。いわば見えない結びつきの糸を切る機能といえよう。

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◆はさみ

[縁切りや縁結びの力]

  鋏の機能は道具としても便利だが、人間関係においても魂の結びつきを断ち切る効果をももつ呪力とし発揮される。また、逆に結び付ける力として利用されることもある。

 福島県南会津郡檜枝岐村には、「縁切り婆さん」とよばれる神さまが祀られていて、石像の前にはたくさんの鋏が奉納されている。本来は子供を水難から守る水神様として祀られたものというが、いつの頃からか縁切り、縁結びの神さまとして信仰されるようになったという、縁切りには錆びた鋏を、縁結びには新しい鋏を奉納して祈願する習慣になっている。

  『源氏物語』の中に、鋏で髪を切る話が記されているが、当時は女子の成女式である「髪除」などの儀式に鋏が用いられていた。この鋏は、いわば少女から脱皮し、一人前の大人の女性として魂を肉体にしっかりと定着させる区切りを象徴する役割をもっている。また、悪い病気を人形などに負わせて他界に送り出す、疫神送りの行事にも鋏が用いられる。呪物の鬼人形の手を鋏に見立てて作り、病気をもたらす悪霊との縁を切るまじないとするのである。この場合、鋏の断ち切る機能とそもそも魔を除ける金物の呪力が結びつけられたものと考えられている。

 鋏も針供養、筆供養、包丁供養などのように供養の対象とされる。人間の生活に密着した道具である鋏には、長く使ううちに魂が宿る。邪険にして妖怪化しないように、鋏に宿った魂を浄化するために「祀り捨てる」のである。

握り鋏

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◆紐

[魂を結ぶ玉の緒]

  ヒモの語源は、ヒキムスブ(引き結ぶ)からきているといわれ、紐の中心的な呪力は魂を結ぶ機能にある。古代には、紐のことを「緒」とか「紐の緒」と呼んだ。当時の言葉に「玉の緒」「年の緒」「息の緒」などがあるが、いずれも生命に関わるものであり、紐の霊的な力の基本的な性格を表している。また、紐は「秘緒」の略という説もある。これは古代の人々が紐の呪力を信仰し、ふだんから魔除けの護符として身に寸けていたことと関係しているようである。不想議な力を秘めている紐のイメージか。

 神杜に参拝するときの習慣的な作法として、拝殿前に垂れ下がっている紐を引っ張って神鈴を嶋らす。この垂紐を引くという行為は、それよって人の魂と神とのつながりを確認するという意味がある。俗にいえば、神に通じるための挨拶のようなものである。それによって神の意志をうかがう心構えをし、その霊力を招来する(加護を受ける)ことができるわけで、機能的には仏教の救済の綱(紐、糸)に共通する。

[縁を結んだり解いたりする命の緒]

  紐の呪力は、災いや病気を除いたり、恋人にめぐり合えるように、といった願いを込めたまじないに用いられることも多い。『万葉集』の恋の歌には紐という言葉が多く使われている。

「白たへのわが紐の緒の絶えぬ間に恋結びせん逢わん日まで」(巻12)

  この歌の「恋結び」とは、まじないの結び方の一種で、こうすれば早く恋しい人に会えるとされていたらしい。このように万葉の紐の表すものは、人の魂を「結ぶ」ことや「解く」ことに関わり、男女の心の交わりを示すものとして用いられている。ちなみに「下紐を解く」とは、男女が契りを交わすことをさす。

 紐はまた、あの世とこの世をつなぐ機能も発揮する。生まれた赤ん坊の胞を「ヘソの緒」というが、この緒は新たな生命力を得たことを象徴する紐である。その子供が無事に成長すると七五三の行事を行うが、その際に「紐落とし」「紐解き祝い」と呼ばれる儀礼が行われる。この場合の紐は、逆にあの世との縁を切ることによって子供の魂がこの世に定着し、無事に成長して一人前の社会の構成員となることを願う呪物として機能している。そして、臨終を迎えて命が絶えることを「魂の緒が切れる」という。肉体に結び留める緒=紐が切れれば、魂はあの世へと戻って行き、人は死ぬのである。

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◆笛

[笛の調べは神の声]

  笛の調べは、はるか遠くほのかに聞こえたと思えば近くに聞こえたりといったふうに、なんとも幽玄な雰囲気を漂わせて人の耳を魅了する。神祭りの重要な楽器である鈴の音が“自然の風"といわれるのに対して、ソフトでこまやかな音質の笛の音は“人の風"ともいわれる。風を神の息吹と考えた古代の人々は、そんな笛の音を神の声として感じたのである。

 一般に神遊びなどの行事では、笛は神を招き寄せる手段として重要な役割を果たしている。たとえば、新年の太神楽や田の神を迎え祀る御田植祭などの囃子に笛は描かせない楽器である。招くばかりではなく、能の神能物(翁神と媼神の登場する『高砂』など)で四拍子(笛、小鼓、大鼓、太鼓)の1つとして用いられる笛などは、翁の姿でこの世に現れた神の存在を表す機能として発揮される。

  「神の声」である笛は、昔から人のやさしい心情や魂と結びつけられてきた。山梨県の笛吹川にまつわる伝承に「笛吹きの権三郎」の話がある。昔、笛の上手な権三郎という著者がいて、いつも笛の音が好きな母に聞かせて慰めていた。あるとき大洪水で母子とも流され、権三郎だけが岩に這い上がって助かった。以来、水死した母を思い日夜笛を吹きながら川岸を歩くようになったが、やがて川に落ちて水死してしまった。そこで村人たちは、彼の孝心を哀れみ手厚く葬ってやったという。

[天女を魅了する音色]

  神降ろしの楽器である笛の呪力は、異類婚姻謂の天人女房系統の昔話「笛吹き婿」では、天女を天界から招き寄せたり、妻の居所を捜し出すといった力を発揮する。その内容は次のようなものだ。

 男の吹く笛の音に魅了された天女が、天界から舞い降りて男の妻となり、れを知った殿様が難題を突きつけて、できなかったら女房を差し出せと要求するが、男は女房の援助によって解決する。さらに、男は初婿入りのため一人で天に昇り、そこでもらった一粒食べると千人力を得るという米(又は菓子、薬)を鎖に繋がれていた鬼にあげたため、鎖を切って地上に逃げた鬼は前から目を付けていた天女(男の女房)をさらってしまう。地上に戻った男は、笛を吹きながら妻を捜し無事に助け出す。

 このように、天女と人間の男の心を結びつける機能は、笛の「神の声」としての基本的な性格を示すものといえる。さらに、天=異界に通じるというだけでなく、鬼にさらわれた妻の居場所を探し当てて助け出すための重要な役割も果たす。それは魔の災いを退けるという意味で、一種の破邪の呪力とも考えられる。

[神女動物の魂を引きつける]

  天女の心を動かした笛の力は、いうまでもなく男女の恋を成就させる力ももっている。そういう笛として、有名なのが、語り物『浄瑠璃物語』の義経と浄瑠璃御前の話や、幸若舞曲『鳥帽子折り』などに登場する草刈笛である。草刈笛というのは、「山路の笛」とか「山路の草刈笛」の説話で有名な霊的な力をもつ笛である。その内容は、用明天皇(聖徳太子の父).が身分を隠して豊後に下り、真野長者の牛飼童子となって山路と名乗り、草刈笛を吹いて観音の申し子の玉世姫をめとって后にし、のちに聖徳太子が生まれたというもの。このように神の娘の魂を引きつけるほかにも、動物の魂を魅了したりする草刈笛は、魂を結ぶ呪力を発揮する笛の代表的なものといえる。

横笛研究会

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◆枕

[霊魂の容器タマクラ]

  マクラの語源については、「真座」からきたもので神が降臨する場所.のこと、あるいはタマクラ(魂倉、魂座)の縮まったもので「魂の容器」を意味したものという説が有力である。いずれにせよ枕は、神霊や霊魂といったものと深く関係する性格をもっているのである。そもそも霊魂を中に込めるために物を巻いて作られたともいわれるように、安眠のためという実用性と同時に、本来的に「霊魂の容器」という機能を備えた道具なのである。

 人が眠ると、魂は肉体から離れて浮遊しやすくなる。そのとき枕をしていれば、魂は遊離して枕の中に宿ることになり、目覚めればまた肉体の中に戻つて来る。肉体から離れて浮遊する魂は、あの世へと去るか悪霊にとらえられるかして、人は死んでしまうことになる。枕というのは、眠っている間にそうならないための大事な道具である。それゆえに昔から枕は、霊威にあふれる神聖なものとされ、また、霊魂の宿る機能をもつことから、死後も魂が宿ると考えられたのである。

[吉凶や人の運命を知らせる夢枕]

 人が眠るために用いる枕は、夢と深く関係する。民俗学者の宮田登は『妖怪の民俗学』の中で「枕は別な世界に移動するための夢を見る呪具」と述べている。昔から、枕をすると神霊=枕神が現れて、神の意志を伝えると考えられた。枕神というのは、枕の精霊といった固有の存在ではなく、人が日頃から信仰している神が夢の中に現れることをいうもので、夢のお告げとして神意を伝えたり、ときには奇瑞を表したりもする。

 昔から信じられている夢占いも、夢で神のお告げを聞くというものである。先祖が夢枕に立って家の運命に関する大事なことを託宣したり、近親者や親しい人が夢枕に立ってその人自身の運命や死を知らせたという話はよくある。このように夢が物事の前兆を示すことを、夢のお告げ、夢知らせ、夢占いなどというが、これをつかさどるのが枕神なのである。

 枕神の力に頼る受動的な方法だけでなく、もっと積極的にいい夢を見るための枕の利用法もある。正月2日の初夢に象徴されるように、昔から夢は吉凶を表すものと考えられた。そこで枕は、昔から吉夢を見るための手段としても使われてきた。その方法は、枕を作るときに形を工夫したり、図柄や文字、強い動物、或いは詰め物に魔よけの力があるといわれる物を用いることによって、悪霊や危険から守る力を発揮させるというものである。中国伝来の架空動物の莫は、枕に用いられる神秘的な動物の代表的なもので、日本でも悪い夢を食べるとされ、豊臣秀吉が莫の形をした枕を用いたことはよく知られている。江戸時代には、摸の絵のついた箱形枕などが盛んに使われ、正月の初夢の縁起物の宝船の帆には、摸の文字が描かれた。

 そのほか架空動物の竜や唐獅子、実在の動物では虎、象、熊なども守護獣とされ、夜行性の猫、コウモリが図柄に用いられ、さらに牛や鹿の角を用いた角枕などもある。植物では、ギョウジャニンニク、イケマ(ガガイモ科の蔓性の草)などが詰め物に用いられた。また、悪魔除けと長寿の効用がある薬草の牡丹、アヤメ、菊、福を呼ぶめでたい松竹梅などの図柄。ナンテンは、「難を転ずる」に通じることから悪夢を吉夢に変えるとされた。ほかにも、鶴亀、扇(末広がり)、だるま(七転八起)や縁起のよい詩文や文字などを図柄に用いたりすることも多い。

[使う者の情念や魂を宿す]

  枕には使う人の魂が宿るといわれる。昔は、旅に出た人の魂が宿るものとして、留守宅ではその人の枕が大事にされた。あるいは、「万葉集」の恋歌にも詠まれているように、枕が離れている恋人同士を夢の中で会わせたりする力をもつと考えられていた。

  人の魂を宿し男女の情愛のシンボルともされる枕は、同時に使用者の死後もその魂を宿しつづける。枕が人の死や葬式などと関係が深いのはそのためである。例えば臨終直後や痛夜に枕元で唱える経を枕教といい、死者の枕元に供える食べ物を枕飯、枕団子という。枕教は死者の成仏をうながすためのものである。また、食事を供えるのは、死霊がよそに遊離しないためのまじないといわれる。一般に枕飯は、死者に関わる食べ物であるから、普段とは違って戸外の臨時のかまどで炊き、茶碗に山盛りにして一本箸をたてて供えるもので、飯の代わりに枕団子を供えるところもある。

 ところで、死者を寝かせる向きは北枕にするのが全国的な習俗である。北枕にする理由は、釈迦が入滅のとき頭を北にしていたことにならったものといわれている。普段北枕を忌む理由も、ここからきたものである。そのほか枕に関する俗信には・枕を投げたり・踏んだり・蹴ったりしてはいけないとか、帯など長いものを枕にしてはいけないといったものがある。その背景には、使うものの魂が宿る神聖なものであるという観念がある。

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◆水引

[結び方で気持ちを伝える]

  水引の起源は、婚礼用の祝儀樽に細い注連縄を掛け結ぶ習慣から発生したものと考えられている。注連縄をかけることは、神からの賜りものを意味し、水引をかける行為が神事や信仰に由来する習慣であることがうかがえる。現在では贈り物する相手に対するお祝いや感謝の心を象徴するという機能が主になっているが、そもそも贈答に水引が用いられる背景には、日本人のムスビ(産霊)=結びの観念がある。
ムスビは、物や姓名を生み出す霊的な力であり、結び目は魂の象徴とされる。

  魂と魂を結ぶことを「縁結び」といい、人間関係あるいは男女の結びつきを表し、仏教では結縁といって仏と衆生の精神的な結びつきを意味する。つまり、水引の呪力は結び目にある。

[魂を込める機能にある]

  そこで水引の約束事として重視されるのがその結び方である。基本的に吉事の場合は「返し結び(蝶結び)」や「花結び」にし、「再びあるように」という意味を込める。一方、凶事の場合は、「真結び」で結び、端をぴんと跳ね上げて先端は丸めて結び止めにして、「再び繰り返すことのないように」という願いを込める。不祝儀の場合も「真結び」で結ぶが、こちらは端を垂らすようにし、先端は切りそろえて「結び切り」にする。凶事が 「これ切り起こらないように」という意味である。このように水引は、結び方によって人間の気持ち(願望)を表現し、それを神にを伝える手段なのである。結婚式の三三九度の銚子につける雄蝶・雌蝶の水引をはじめ結納用の鶴亀や松竹梅の縁起物などは、結びの約束事に気持ちを託した代表的なものである。

水引館

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